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解体工事のアスベスト調査義務とは?対象建物と罰則を解説

解体工事のアスベスト調査は、建物の規模や築年数だけで一律に省略できるものではありません。元請事業者などは、原則として解体部分に石綿含有建材が使われているかを着工前に調べ、一定規模以上の工事では行政へ結果を報告します。

「小さな家でもアスベスト調査は義務?」「80㎡未満なら何もしなくてよい?」「施主と解体業者のどちらに義務がある?」

この記事では、解体工事のアスベスト調査義務と報告義務の違い、対象建物、調査者の資格、発注者が協力する内容、違反時の罰則、見積もり前に確認する書類を解説します。

この記事で分かること

  • 事前調査が必要な工事と、行政報告が必要な工事の違い
  • 2023年・2026年に始まった資格者調査の対象
  • 元請事業者と発注者が行うこと
  • 無調査・未報告を避ける契約前の確認事項
目次

解体工事ではアスベストの事前調査が原則必要

解体工事では、石綿障害予防規則と大気汚染防止法に基づき、工事対象に石綿含有建材があるかを着工前に調査する必要があります。調査結果は記録し、現場へ備え付け、概要を作業場所へ掲示します。

  • 調査義務と行政への報告義務は対象範囲が異なる
  • 80㎡未満でも事前調査と記録は必要になる

「古い建物だけ」「80㎡以上だけ」に調査義務があると考えるのは誤りです。80㎡という基準は、建築物の解体工事で結果を行政へ報告するかを判断する基準であり、事前調査そのものの基準ではありません。

調査義務と報告義務は対象範囲が異なる

調査義務は、建材を損傷する解体・改修作業について原則として必要です。一方、行政への報告義務は、建築物の解体部分が80㎡以上など、法令で定めた規模の工事に限られます。

項目対象主な対応
事前調査解体・改修工事で原則必要書面・目視、必要に応じて分析または含有みなし
結果の報告建築物の解体部分80㎡以上など着工前に電子システムで労働基準監督署と都道府県等へ報告
記録・掲示報告対象外の小規模工事を含む結果を記録・保存し、現場へ備え付け・掲示

厚生労働省は、報告対象に当たらない場合でも事前調査は実施しなければならないと案内しています。工事規模だけで「調査不要」とする見積もりには注意してください。

出典:厚生労働省「小規模工事等の着工前に必要な手続きについて」

80㎡未満でも事前調査と記録は必要

建築物の解体部分が80㎡未満であれば、通常は石綿事前調査結果報告システムによる報告対象外です。しかし、解体部分の建材を確認する事前調査、結果の記録、現場での掲示などは必要です。

店舗の内装撤去、部分解体、設備工事などでも、建材を切断・破砕・研磨する場合があります。建物全体の床面積ではなく、実際に行う作業と解体部分を基に業者へ確認してください。

アスベスト調査義務が強化された時期

アスベスト調査に関する義務は、2021年から段階的に強化されました。現在の契約では、工事の着工日と対象物に応じて、次の基準を確認します。

2021年から2026年までのアスベスト事前調査義務化の流れを示した図
  • 2021年4月:事前調査結果の記録・保存、現場への備え付け・掲示などが強化
  • 2022年4月:一定規模以上の工事で事前調査結果の報告を開始
  • 2023年10月:建築物の事前調査を資格者が行う制度を開始
  • 2026年1月:一部の工作物でも資格者による事前調査を開始

制度開始前に建てられた建物だけが対象になるのではありません。着工年月日や使用建材を書面で確認し、対象工事を始める時点のルールに沿って調査します。

アスベスト調査義務の対象となる建物・工作物

アスベスト調査義務の対象は、戸建て住宅、集合住宅、店舗、事務所、倉庫などの建築物に加え、一定の工作物や船舶にも及びます。木造住宅でも、屋根材、外壁材、軒天、内装材などに石綿が含まれる可能性があるため、構造だけでは除外できません。

  • 戸建て・マンション・店舗などの建築物
  • 2026年から資格者調査が必要になった一部の工作物

戸建て・マンション・店舗も対象になる

建築物の解体では、用途や構造にかかわらず、対象部分の建材を確認します。戸建て住宅は吹付け材がなくても、スレート屋根、サイディング、けい酸カルシウム板、床材などの成形板に石綿が使われている場合があります。

建築物の事前調査は、一般建築物石綿含有建材調査者、特定建築物石綿含有建材調査者、一戸建て等石綿含有建材調査者など、対象範囲に合う資格者が行います。一戸建て等の資格には調査できる建物部分の制限があるため、資格名と対象範囲を確認してください。

2026年から一部の工作物も資格者調査の対象になる

2026年1月1日以降に着工する工事から、一部の工作物の解体・改修では資格者による事前調査が必要です。対象には、炉設備、ボイラー・圧力容器、発電・変電・配電設備、煙突、トンネルの天井板、遮音壁などが含まれます。

工作物の種類によって、工作物石綿事前調査者に限られる場合と、一定の建築物石綿含有建材調査者なども調査できる場合があります。住宅の外構設備や事業用設備を含む工事では、対象物を業者へ伝え、必要な資格を確認しましょう。

出典:厚生労働省「工作物石綿事前調査者」

行政への報告義務がある解体工事

行政への報告義務がある主な工事は、建築物の解体部分が80㎡以上、建築物の改修工事の請負金額が税込100万円以上、対象工作物の解体・改修工事の請負金額が税込100万円以上の場合です。

工事報告基準
建築物の解体解体部分の床面積の合計が80㎡以上
建築物の改修請負金額が税込100万円以上
対象工作物の解体・改修請負金額が税込100万円以上

報告は、元請事業者が石綿事前調査結果報告システムを使い、労働基準監督署と都道府県等へ行います。請負金額には工事費、材料・機器などの費用、消費税を含む工事全体の合計金額を用います。

複数棟や増築部分がある場合は、どの範囲を一つの工事として扱うかで判断を誤りやすくなります。発注者が面積や金額を自己判断せず、元請事業者へ報告対象の判定根拠を確認してください。

アスベスト事前調査を行う方法と資格者

アスベスト事前調査は、設計図書などの書面調査と現地の目視調査を行い、含有の有無を判断できない建材は分析するか、石綿を含むものとして扱います。分析を省略して含有みなしとする場合は、その後の除去・処理も石綿含有を前提に進めます。

  1. 設計図書、改修履歴、建材資料、着工年月日を確認する
  2. 現地で各部位の建材、製品名、劣化・改修状況を目視する
  3. 書面と目視で判断できない建材を分析または含有みなしとする
  4. 結果を記録し、発注者へ説明する
  5. 報告対象工事は着工前に電子システムで報告する

調査方法、必要資料、費用項目は解体工事のアスベスト事前調査とはで詳しく解説しています。

元請事業者と発注者が負う義務・役割

事前調査と行政報告の実務は主に元請事業者が行いますが、発注者にも適正な調査・作業へ配慮し、必要な情報と費用を提供する役割があります。発注者が費用を不当に削減したり、工期を無理に短縮したりして、施工業者の法令順守を妨げてはいけません。

  • 元請事業者:調査・報告・記録・掲示を行う
  • 発注者:図面や改修履歴を提供し、適正費用へ配慮する

元請事業者は調査・報告・記録・掲示を行う

元請事業者は、資格者による事前調査を手配し、結果を記録します。報告対象工事では電子システムで結果を報告し、現場に調査結果の概要を掲示します。石綿含有建材がある場合は、作業方法、隔離・湿潤化、保護具、廃棄物処理、必要な届出を計画します。

下請業者へ作業を任せる場合でも、元請事業者が全体の調査・報告を確認します。見積書では「アスベスト調査一式」だけでなく、書面・目視、試料採取、分析、報告、除去、処分を分けて確認しましょう。

発注者は図面や改修履歴を提供し適正費用を負担する

発注者は、設計図書、確認済証、増改築の記録、過去の石綿調査報告書、建材資料など、調査に役立つ情報を元請事業者へ渡します。資料がなくても調査義務がなくなるわけではありませんが、情報があれば調査対象を整理しやすくなります。

また、調査・分析・飛散防止・適正処理に必要な費用と工期を契約へ反映します。厚生労働省は、発注者に対して施工業者への配慮義務と、事前調査費用を含む契約上の配慮を案内しています。

出典:厚生労働省「解体・改修工事の発注者のみなさまへ」

解体工事における発注者の責任や届出・契約時の留意点については、行政書士法人Treeの「解体工事の発注者の責任|分別解体等の届出・元請の指導と委託契約の留意点」も参考になります。

アスベスト調査義務に違反した場合の罰則

アスベスト調査や報告を怠ると、法令に基づく指導・命令や罰則の対象となる場合があります。大気汚染防止法では、事前調査結果の報告をせず、または虚偽の報告をした者に30万円以下の罰金を定めています。

石綿含有建材がある工事で飛散防止措置を守らない場合は、違反内容に応じて作業基準適合命令、工事停止、より重い罰則につながる可能性があります。労働者へのばく露防止義務に違反すれば、労働安全衛生法令上の措置も受けます。

罰金額だけを比較するのではなく、工事停止、周辺への影響、除染・再施工、行政対応、信用低下を含むリスクとして考える必要があります。発注者も、無調査を前提とする見積もりや、法定対策を省く要求を受け入れないでください。

出典:環境省「大気汚染防止法及び政省令等」

解体工事を契約する前のアスベスト確認項目

解体工事を契約する前に、調査者、範囲、費用、報告、含有判明後の工事条件を書面で確認します。次の項目が曖昧な場合は、見積もりの内訳を追加してもらってください。

  • 事前調査を行う会社と資格者の氏名・資格区分
  • 調査する建物、付帯設備、工作物、部位
  • 書面・目視・採取・分析・報告の費用内訳
  • 行政報告の対象判定と提出者
  • 石綿含有判明時の見積もり変更と承認手順
  • 除去作業の届出、飛散防止、記録、廃棄物処理
  • 施主が受け取る調査報告書・完了書類

分析結果が出る前に解体日を確定すると、含有判明後に工程が大きく変わる場合があります。調査期間、分析日数、届出期限、除去期間を含めた工程表を作成し、通常の解体工事と分けて予備日を確保しましょう。

解体工事のアスベスト調査義務に関するよくある質問

解体工事のアスベスト調査義務は誰にありますか?

解体工事の事前調査と結果報告は、主に工事を請け負う元請事業者が行います。発注者には、調査に必要な図面や情報を提供し、法令を守れる費用と工期へ配慮する役割があります。

2006年9月以降に建てた建物も確認が必要ですか?

着工日と使用建材を書面で確認する必要があります。2006年9月1日以降に着工したことが設計図書などで明らかな建築物は、石綿含有建材の使用規制を踏まえた確認方法が適用されますが、日付を推測して調査手続きを省くことはできません。

アスベスト調査の結果は施主も受け取れますか?

元請事業者は発注者へ調査結果を記載した書面を交付します。施主は、調査報告書、分析結果、報告システムの提出内容、石綿含有建材がある場合の作業計画・完了記録など、受け取る資料を契約時に決めてください。

まとめ

解体工事のアスベスト調査義務は、工事規模にかかわらず原則として生じます。建築物の解体部分が80㎡未満なら行政報告の対象外となる場合がありますが、事前調査、記録、掲示などは必要です。

建築物では2023年10月から、対象となる工作物では2026年1月から、資格者による事前調査が必要です。発注者は、元請事業者の資格者、調査範囲、報告対象の判定、費用、含有判明後の対応を契約前に確認し、図面や改修履歴を提供してください。

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