解体工事のアスベスト事前調査は、工事の規模にかかわらず、解体する部分の全ての材料を対象に行います。床面積80㎡未満でも調査は必要であり、80㎡は建築物の解体で調査結果を行政へ報告する基準です。
「古い建物だけが対象?」「誰が調査する?」「80㎡未満なら報告も調査も不要?」
この記事では、解体工事前のアスベスト(石綿)事前調査について、対象、書面・目視・分析の方法、資格者、行政への報告義務、発注者が確認する書類を解説します。
この記事で分かること
- アスベスト事前調査が必要な解体工事
- 書面調査・目視調査・分析調査の違い
- 資格者と元請業者の役割
- 80㎡以上など行政報告が必要になる基準
解体工事のアスベスト事前調査とは
アスベスト事前調査とは、建築物や工作物の解体・改造・補修工事を始める前に、工事部分の材料へ石綿が含まれているかを調べることです。設計図書などの書面と現地での目視を基本とし、判定できない建材は分析するか、石綿を含むとみなして必要な対策を行います。
石綿を含む建材を知らずに切断・破砕すると、繊維を周囲へ飛散させ、作業者や近隣の人がばく露するおそれがあります。そのため、調査結果を基に除去方法、隔離・湿潤化、保護具、届出、廃棄物処理を計画してから解体工事へ進みます。
建物の規模や築年数だけでは省略できない
事前調査は、工事規模の大小にかかわらず、解体・改造・補修する部分の全ての材料について必要です。「小さな物置だから」「床面積が80㎡未満だから」という理由だけでは省略できません。
また、築年数だけで石綿の有無を確定しません。建物の着工時期、改修履歴、建材の商品名・製造番号などを法令で定められた方法に沿って確認します。古い建物は資料が残っていない場合があるため、現地で部屋ごと・部位ごとに建材を確認することが重要です。
出典:埼玉県「建築物等の解体等工事時における石綿(アスベスト)の事前調査について」
事前調査を行う義務は元請業者または自主施工者にある
請負工事では元請業者、自分で工事する場合は自主施工者が、着工前に事前調査を行います。実際の調査を下請業者や調査会社へ依頼しても、元請業者は調査範囲や結果を確認し、発注者への説明、現場掲示、必要な行政報告を行います。
発注者は、設計図書、確認済証、過去の改修記録、建材メーカーの資料など、手元にある情報を元請業者へ提供します。調査費や石綿除去費を含む適正な工期・費用を確保し、調査や対策を妨げる条件を付けないことも大切です。
建築物の事前調査は原則として資格者が行う
建築物の解体・改修工事では、2023年10月1日から、原則として建築物石綿含有建材調査者などの有資格者による事前調査が必要です。2026年1月1日以降に着工する一部の工作物についても、資格者による調査が必要になりました。
見積もりを依頼するときは、「事前調査を誰が行うか」だけでなく、調査者の資格名、氏名、修了証などを確認してください。分析調査が必要な場合は、石綿分析に必要な知識・技能を持つ者が行うかも確認します。
出典:厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト「解体業者」、環境省「大気汚染防止法施行規則等の一部を改正する省令等の公布について」
アスベスト事前調査の方法と流れ
事前調査は、書面調査、目視調査、判定、発注者への説明、必要な行政報告の順で進みます。書面だけ、目視だけで終わらせず、解体範囲にある建材を網羅して根拠を記録します。

1.書面調査で図面・改修履歴・建材情報を確認する
書面調査では、設計図、仕様書、確認済証、竣工図、過去の改修記録から、建築時期と使用建材を確認します。建材の商品名、型番、製造会社、製造時期が分かれば、メーカー資料や石綿含有建材データベースなどで含有情報を調べます。
ただし、図面と実際の施工が一致しない、改修で別の建材が追加されている、隠れた部分がある可能性があります。書面だけで建物全体を「石綿なし」と判断せず、現地の目視調査へ進みます。
2.目視調査で部位ごとの建材を確認する
目視調査では、資格者が現地を確認し、屋根、外壁、軒天、天井、壁、床、設備配管、機械室など、解体部分に使われている建材を特定します。建材の層が重なっている場合は、表面だけでなく下地や接着剤も確認します。
安全上確認できない場所や、家具・設備で隠れている場所があれば、未調査部分として明記します。着工後に建材が露出した時点で追加調査が必要になることもあるため、調査報告書で未確認範囲を把握しておきましょう。
3.書面と目視で判定できない建材は分析する
商品名や製造時期を確認できず、見た目でも石綿の有無を判断できない建材は、試料を採取して分析します。分析を行わず、石綿含有とみなして飛散防止措置を講じる方法もあります。
試料採取では建材を傷つけるため、資格者が飛散を防ぎながら代表性のある箇所から採取します。発注者が自分で削ってサンプルを持ち込むことは避け、採取方法と検体数を調査者へ確認してください。
4.調査結果を発注者へ書面で説明する
元請業者は、調査を終了した年月日、調査方法、調査箇所、建材ごとの判定、判断根拠、調査者の氏名・資格などを記録し、発注者へ書面で説明します。石綿が見つかった場合は、除去方法、作業工程、必要な届出、追加費用も確認します。
調査結果は工事現場へ備え付け、概要を見やすい場所へ掲示します。厚生労働省の案内では、事前調査の記録や作業の記録を3年間保存することが示されています。
アスベスト事前調査結果の報告義務
全ての解体・改修工事で事前調査が必要ですが、行政への結果報告は一定規模以上の工事が対象です。調査の義務と報告の義務を分けて理解してください。
| 工事の種類 | 事前調査 | 行政への結果報告 |
|---|---|---|
| 建築物の解体 | 規模を問わず必要 | 解体部分の床面積合計が80㎡以上 |
| 建築物の改造・補修 | 規模を問わず必要 | 請負代金合計が100万円以上(税込) |
| 対象工作物の解体・改造・補修 | 規模を問わず必要 | 請負代金合計が100万円以上(税込) |
建築物の解体は床面積80㎡以上で報告する
建築物の解体では、解体作業の対象となる床面積の合計が80㎡以上なら、元請業者または自主施工者が事前調査結果を都道府県などへ報告します。工事を複数の契約に分けた場合でも、同じ者が請け負う解体等工事は一つの契約とみなして判定します。
80㎡未満は行政報告の対象外になる場合がありますが、事前調査、発注者への説明、現場掲示、記録保存は必要です。見積書に「80㎡未満のためアスベスト調査なし」と書かれていたら、業者へ根拠を確認してください。
改修工事などは請負代金100万円以上で報告する
建築物の改造・補修と対象工作物の解体・改造・補修では、請負代金の合計が100万円以上(税込)の工事が報告対象です。材料費を含む作業全体の請負代金で判断し、事前調査の費用は含めません。
建物の解体は床面積、改修と対象工作物は請負代金というように基準が違います。建物と工作物を同時に撤去する場合は、工事項目ごとに報告対象を元請業者へ確認しましょう。
報告は原則として電子システムを利用する
報告対象の工事は、原則として「石綿事前調査結果報告システム」から結果を送信します。システムを利用できない場合は紙様式でも報告できます。報告先や問い合わせ先は工事場所を所管する自治体です。
石綿が見つからなかった場合でも、報告基準に該当する工事は調査結果を報告します。「石綿があったときだけ報告する制度」ではありません。
結果報告と石綿除去工事の届出は別の手続き
事前調査結果の報告と、石綿を除去する作業に関する届出は別の手続きです。報告対象の規模か、届出対象の建材・作業かをそれぞれ確認します。
事前調査で吹付け石綿や石綿含有保温材などが見つかった場合は、大気汚染防止法や石綿障害予防規則に基づく作業届・計画届が必要になることがあります。建材の種類、除去方法、工事場所の条例によって提出先と期限が変わるため、元請業者から手続き一覧を受け取りましょう。
事前調査から除去・処分までの全体像は、解体工事のアスベスト調査・除去費用と届出で解説しています。
発注者が事前調査報告書で確認する7項目
発注者は、調査済みという口頭説明だけでなく、調査範囲、判定、根拠、資格、行政手続きまで報告書で確認します。特に、未調査部分と「不明」の扱いを残したまま着工しないことが重要です。
- 解体・改修する全ての部屋と部位が調査対象になっている
- 屋根・外壁・内装・設備など建材ごとの判定がある
- 図面、商品情報、分析結果など判定根拠が記載されている
- 目視できなかった場所と追加調査の時期が明記されている
- 調査者の氏名と資格が記載されている
- 行政報告と除去作業の届出の要否が整理されている
- 石綿含有時の除去方法、工程、費用、処分方法が示されている
事前調査報告書は、解体業者を比較する資料にもなります。含有建材の種類と数量が各社で異なる場合は、調査範囲や判定根拠を確認してから見積金額を比べてください。
アスベスト事前調査の費用が変わる理由
事前調査の費用は、建物の規模、部屋数、図面の有無、建材の種類、分析検体数、高所・狭所などの調査条件で変わります。単純な床面積だけでなく、何種類の建材を確認し、何検体を分析するかが影響します。
| 費用項目 | 見積もりで確認する内容 |
|---|---|
| 書面調査 | 図面・改修履歴・建材資料の確認範囲 |
| 現地目視 | 調査する棟、部屋、屋根、外壁、設備、調査日数 |
| 試料採取 | 採取箇所、検体数、飛散防止・補修 |
| 分析 | 対象建材、分析方法、検体数、納期 |
| 報告書・行政報告 | 報告書の内容、電子報告、追加調査時の扱い |
見積書では「アスベスト調査一式」ではなく、書面・目視、検体採取、分析、報告書、行政報告を分けてもらいます。分析が追加になった場合の単価や、解体中に未確認建材が出た場合の追加調査費も先に確認してください。
アスベストが見つかった後の流れ
アスベストが見つかった場合は、建材の種類と飛散性に応じた作業計画を作り、必要な届出と飛散防止措置を行ってから除去します。事前調査の結果を受け取っただけでは、除去準備が完了したことにはなりません。
- 石綿含有建材の種類、場所、数量を確定する
- 除去方法、隔離・湿潤化、保護具、廃棄物処理を計画する
- 必要な行政報告・届出を期限までに行う
- 現場へ事前調査結果と作業内容を掲示する
- 石綿含有建材を除去し、取り残しを確認する
- 適正に梱包・運搬・処分して記録を保存する
- 石綿除去後に建物本体の解体へ進む
発注者は、除去費の追加だけでなく、工程の延長、近隣説明、作業完了の確認方法まで業者と共有します。着工前の準備全体は、解体工事前にやること15選も参考にしてください。
アスベスト事前調査に関するよくある質問
80㎡未満、石綿なしの報告、発注者自身による調査についてよくある疑問へ回答します。
床面積80㎡未満の家でも事前調査は必要ですか?
必要です。解体する部分の全ての材料を調査します。80㎡は、建築物の解体について事前調査結果を行政へ報告する義務の基準であり、調査そのものを省略できる基準ではありません。
アスベストがなければ行政への報告は不要ですか?
報告対象の規模に該当する工事は、石綿が見つからなくても事前調査結果を報告します。建築物の解体なら、解体部分の床面積合計が80㎡以上かを確認してください。
発注者が自分でアスベスト調査できますか?
建築物の事前調査は、原則として建築物石綿含有建材調査者などの資格者が行います。発注者は図面や改修履歴を提供できますが、見た目だけで「石綿なし」と判断したり、自分で建材を削って試料を採取したりしないでください。
調査結果は近隣住民も確認できますか?
元請業者は、事前調査結果の概要を工事現場の見やすい場所へ掲示します。掲示がない、内容が分からない、粉じん対策に不安がある場合は、まず現場責任者へ確認し、解決しなければ工事場所を管轄する自治体の環境担当へ相談してください。
まとめ
解体工事のアスベスト事前調査は、規模にかかわらず対象部分の全ての材料について行います。書面と目視を基本とし、判定できない建材は分析するか、石綿含有とみなして対策します。
建築物の解体部分が80㎡以上なら行政への結果報告が必要ですが、80㎡未満でも調査は省略できません。資格者、調査範囲、判定根拠、未調査部分、行政手続き、除去費用を報告書と見積書で確認しましょう。対応できる解体業者を比較したい場合は、最大5社の一括見積もりを利用できます。
